こんにちは。流通気象コンサルタント・気象予報士の常盤勝美です。今年も昨年同様、夏は記録的な高温となりましたね。この災害級の暑さが、昨年今年の一過性のものなのか、それとも今後のスタンダードになってしまうのか気になるところです。
そんな今夏の各カテゴリの購買動向を調査していたとき、大変興味深い傾向が見られました。今回はそれを、速報的にご案内します。UVケア用品の購買動向に関する考察です。
「UVケア・サンタン」今年の購買動向と昨対比
図1は、UVケア用品(True Data定義のカテゴリ名は「UVケア・サンタン」)の月次での売上推移のグラフ(期間:2022年9月~2024年8月)です。7月から8月の気温で見ると全国的に昨年と今年に大きな差はなく、いずれにしても記録的高温だったところがほとんどなのですが、UVケア用品の売上個数で見ると、7月8月と、今年は昨年を下回りました。気候差はそれほど大きくないにも関わらず売上個数に差が見られたことの要因を探るべく、2つの仮説を立てました。
売上伸び悩み仮説その1 天候不順
特にUVケア用品の消費の激しい7月、8月の天候実績を確認します。7月前半は、日本海側の地方中心に梅雨前線の活動が活発でした。7月後半は各地で梅雨明けが発表されたものの、南からの湿った空気が日本列島に入って熱帯地域のような急なにわか雨が起こりやすくなりました。昨年7月の降水量が多くの地点で平年を下回っていた影響もあり、今年7月の月間降水量は多くの地点で昨年を上回りました。8月に入っても南からの湿った空気が大量に流れ込む状況が続き、にわか雨、雷雨が頻繁に発生したのに加え、台風5号や7号、10号の影響で大雨となったところもあり、月間降水量はやはり昨年を上回りました。
UVケア用品は、晴天時により多く消費されるものなので、昨年との比較で見た場合、今年の売上が昨年を下回ったのは矛盾のない傾向です。
参考までに7、8月の雨日数を調べてみました(表1参照)。降水量はほとんどの地点で今年の方が多かったものの、8月の雨日数は必ずしも今年の方が多いとは限らないようです。8月の売上が伸び悩んだ原因は、天候不順だけではない可能性があります。
売上伸び悩み仮説その2 暑すぎに対する健康配慮
今年の災害級の暑さに関するニュースやSNSのトレンドとして、「暑すぎて学校のプール中止」が話題となりました。また一部の学校では、熱中症対策として午後の部活動を中止する措置がとられたことも報道されました。日々環境省、気象庁から熱中症警戒アラートが発表され、「熱中症による人の健康に係る被害が生ずるおそれがあるので、他人事と考えず、暑さから、自分の身を守りましょう」「涼しい環境以外では、運動等を中止しましょう」とのメッセージが発せられました。暑すぎることの健康影響を回避する志向が今年は高まった印象があります。特に気温が高い日中時間帯に外出を控える傾向が強くなった結果、UVケア用品の売上が高温帯で頭打ちとなっているという仮説も立てられます。
こちらに関しては、スポーツドリンクでも同様に売上が昨年を下回っていて、同じような背景が影響している可能性があります。
まとめ
今年の災害級の暑さの連続によって、暑いと売れるはずの商品の一部が昨年を下回る売上となり、わずかながらに「暑すぎる」ことによる変化が起きている可能性が見られました。今後この傾向がより顕著になっていくのか、昨年、今年の一過性のものなのか気になるところです。また、今回取り上げた以外にも同様に、これまでとは暑熱時の気温と売上の関係性が変化している商品があるかもしれません。
“地球沸騰化”に対しては、今後も中長期的に注意深く購買動向をウォッチしていく必要がありそうです。
※抽出データ 株式会社True Data「ドルフィンアイ」に搭載されている、「UVケア・サンタン」カテゴリ(業態:ドラッグストア、期間:2022年9月1日~2024年8月31日、データ抽出日:2024年9月11日)の月次の買物指数(買物指数は来店者100万人における購入点数)。
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株式会社True Data 流通気象コンサルタント 常盤 勝美
〈プロフィール〉
大学で地球科学を学び、民間の気象会社で約20年にわたりウェザーマーチャンダイジング関連サービスに従事。2018年6月、True Dataへ入社し、気象データマーケティングを推進。著書に『だからアイスは25℃を超えるとよく売れる』(商業界)など。気象予報士、健康気象アドバイザー。