今年はさらに暑い!?昨夏の猛暑で売れたもの、売れなかったもの

こんにちは。流通気象コンサルタント・気象予報士の常盤勝美です。暑中お見舞い申し上げます。昨年は『地球沸騰化時代到来』を印象付けるような暑い夏、長い夏となりました。今回は改めて、昨夏の猛暑が消費にプラスに作用したと思われる商品、マイナスに作用したと思われる商品、あまり影響を受けなかったと思われる商品をピックアップします。売上の変動は暑さ以外の要因の可能性(値上げなど)も含まれますが、今年も今のところ昨夏同様の高温が続いており、暑い夏、長い夏になると予想されていますので、参考にしていただければと思います。なお今回取り上げる商品は基本的に気温が高い時ほど売上が伸びる傾向があるものです。

なお、本ブログをお読みになっている方々の中で、気温(暑さ)と物の売れ行きの関係について研究されている方、今回のブログで取り上げた商品以外にも傾向を知りたいという方がいらっしゃれば、是非お気軽にこちら(https://www.truedata.co.jp/contact)までお問合せいただければと思います。

改めて、2023年夏の猛烈な暑さを振り返る

前年(2022年)夏のデータと並べてみると一目瞭然のように、2023年夏は、気温がずっと平年を大きく上回る状態が続きました。夏の日本の平均気温は、1898年の統計開始以来最高を記録しました。東京都心では8月全日、最高気温が30℃を超える真夏日となり、これは観測史上初の出来事でした。

猛暑で売上が伸びた商品

昨夏、猛暑で売上が伸びたカテゴリの例を、購入個数の前年比(※6月~9月にかけての13週、以下同様)とともに表1に紹介します。

表1 猛暑で売上が伸びたカテゴリ例

その中でも特徴的商品として、食品スーパーマーケットのデータから「スポーツドリンク」、ドラッグストアのデータから「制汗防臭剤」をピックアップし、図に示しました。

猛暑で売上が伸びたカテゴリには、発汗の多さに起因するものが多く見られました。発汗を補う水分補給、汗のにおいに対策するものなどです。暑さが厳しくなればなるほど発汗量が増えるということを示唆するものと考えられます。

猛暑で売上が伸び悩んだ商品

本来気温が高ければ売上が伸びるはずのものでも、気温が高すぎるために売上が伸び悩んだ可能性があるカテゴリ例を、購入個数の前年比とともに表2に紹介します。

表2 猛暑で売上が伸び悩んだカテゴリ例

その中でも特徴的商品として、スーパーマーケットのデータから「紅茶ドリンク」、ドラッグストアのデータから「蚊取り線香」をピックアップし、図に示しました。

暑すぎて売上が伸び悩んだカテゴリは、飲料のなかでも嗜好性の強いコーヒー、紅茶でした。本来清涼飲料は全般に気温との関係性が強く、気温が高ければ高いほど売上が伸びるのですが、気温が高すぎるとその関係性が少し崩れるのかもしれません。コーヒー、紅茶の中でも様々な甘さの種類があり、甘味の強いタイプは暑すぎる陽気で敬遠され、売上が伸び悩んだという仮説が立てられます。日用品の中では、虫の中でも蚊の対策商品、そしてカビ対策商品の売上個数が前年を割っています。2023年10月のブログにも掲載しましたが、気温が高すぎると蚊の積極的な活動温度帯から外れてしまうことがあり、その影響も一因と考えられます。なおカビ対策に関しては、暑すぎると、カビが生えるような湿度の高い環境での掃除を敬遠してしまうのかもしれません。

猛暑の影響をあまり受けなかったと考えられる商品

今回比較対象としている2022年と、2023年の売上に大きな変化がなかった(※おおむね±3%以内)、すなわち猛暑の影響をあまり受けなかったカテゴリを、購入個数の前年比とともに表3に紹介します。

表3 猛暑の影響をあまり受けなかったと考えられるカテゴリ例

その中の特徴的商品として、スーパーマーケットのデータから「日本茶・麦茶ドリンク」、ドラッグストアのデータから「ゴキブリ捕獲器」をピックアップし、図に示しました。

猛暑の影響がほとんど見られなかったカテゴリは、食品部門ではお茶系飲料や炭酸飲料でした。高温によって水分補給ニーズが高まるため需要が伸びる側面があるものの、塩分が少ない、あるいは甘味を連想する種類はそれほど需要が高まらず、それらの複合的な要因が相殺されて結果的に大きな変化が見られなかったのではないかと考察してみましたが、皆さんの見立てはいかがでしょうか。

まとめ

この先も、中長期的に夏の猛暑は出現頻度が高い状態が続くものと考えられます。夏の猛烈な暑さが消費に与える影響を吟味することは非常に重要です。カテゴリによって影響の方向性や度合いは様々です。それぞれ仮説を立て、検証を行い、それを繰り返すことで、その後の在庫管理精度の向上に役立てていただければと思います。

※抽出データ                                   株式会社True Data「イーグルアイ」に搭載されている、各カテゴリ(業態:食品はスーパーマーケット・日用品はドラッグストア、期間:2022年6月6日~2024年6月2日、データ抽出日:2024年7月17日)の週次の購買指数(購買指数は週別購入個数の当該期間平均値を1としたときの比率)。

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株式会社True Data 流通気象コンサルタント 常盤 勝美
〈プロフィール〉
大学で地球科学を学び、民間の気象会社で約20年にわたりウェザーマーチャンダイジング関連サービスに従事。2018年6月、True Dataへ入社し、気象データマーケティングを推進。著書に『だからアイスは25℃を超えるとよく売れる』(商業界)など。気象予報士、健康気象アドバイザー。