こんにちは。流通気象コンサルタント・気象予報士の常盤勝美です。今年も、スギ・ヒノキ花粉の飛散が終わる頃が近づいてきました。今シーズンの花粉、皆さん症状はいかがでしたか。私は今年もスギ花粉症デビューはしなかったので、症状の辛さは分かりませんが、症状の重い方は毎年つらそうですよね。いつか私にも来るかも⁉とドキドキします。
そんな花粉について、今回のブログでは、今年のこれまでの期間の花粉関連商品の購買データから、今季の花粉飛散状況を類推し、昨年との比較を行います。
目薬、鼻炎用薬のデータで検証
花粉症対策になるカテゴリの購買動向から当シーズンの花粉の飛散規模を類推する取り組みは過去3年にわたって行っています(2023年、2022年、2021年)。今回も同様に、目薬と鼻炎用薬の、北海道を除く地域ごとの購買データを用いて、花粉の飛散状況を検証します。
結果
全国における目薬、鼻炎用薬それぞれの買物指数の推移を図1、各地域における昨年と今年の、売上ピークとなった週の買物指数の比率を表1にまとめます。
結果のポイント① 花粉シーズン到来は昨年とほぼ同様
全国の時系列グラフを見ると、売上の伸びが大きくなっていく様子は、昨年(2023年)と今年(2024年)で大きな違いはありませんでした。花粉シーズンの到来はほぼ同時期だったものと考えられます。昨年2月は北海道を除き気温が高めで本格的な飛散開始が平年並か早め、今年2月も全般に気温は平年より高めで、昨年同様、本格的な飛散開始は平年並か早めだった可能性があります。
結果のポイント② 全国的に昨シーズンより少なかった
昨年と今年の買物指数の違いから、今年のスギ花粉飛散量の傾向を全般及び地域別に見てみます。今年は買物指数の昨年対比が全国及び各地域すべてで1を下回っており、ピーク週の買物指数が前年を下回ったことを示唆しています。
地域別に見ると、目薬は九州地方で前年対比の値が最も大きく、約0.8、鼻炎用薬は関東地方で前年対比の値が最も大きく、約0.7でした。
環境省の2023年12月22日の報道発表によると、今季に向けたスギ雄花の着花量は、地域により大きなばらつきはあるものの、全国的な傾向として、過去10年平均値と比べると同程度かやや少なくなっている、とのことでした。前年対比の値を見ても、地域によっては多くなっているところもありますが、平均的に見れば前年対比の値は1を大きく下回っており、目薬・鼻炎用薬の売上の前年対比と矛盾のない結果となっています。
すなわち、局地的に昨年よりスギ花粉の飛散量が多くなった地域があるかもしれませんが、地方単位で括ると全般にスギ花粉の飛散量は昨年より少なかったものと考えられます。
まとめ
花粉対策関連商品として目薬、鼻炎用薬のこの時期の買物指数を調査したのは今回で4回目です。毎年、興味深い結果が得られています。是非、来シーズン以降の計画に向けて参考にしていただきたいところです。
政府では2023年5月30日、「花粉症に関する関係閣僚会議」を開き、花粉症対策の全体像の中で3本柱を決定しました。今季の目薬・鼻炎用薬の売上にその影響があったかどうかは判然としませんが、政府の取り組みに関する今後の進捗も注意深くウォッチしていきましょう。
※抽出データ 株式会社True 株式会社True Data「ドルフィンアイ」に搭載されている、「目薬」及び「鼻炎用薬」カテゴリ(業態:ドラッグストア、期間:2022年4月4日~2024年3月31日、データ抽出日:2024年4月12日)の週次の買物指数(買物指数は来店者100万人における購入金額)。
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株式会社True Data 流通気象コンサルタント 常盤 勝美
〈プロフィール〉
大学で地球科学を学び、民間の気象会社で約20年にわたりウェザーマーチャンダイジング関連サービスに従事。2018年6月、True Dataへ入社し、気象データマーケティングを推進。著書に『だからアイスは25℃を超えるとよく売れる』(商業界)など。気象予報士、健康気象アドバイザー。