2024年1月のドラッグストアでの「ファミリーアイス」売上伸長を検証

こんにちは。True Data流通気象コンサルタント・気象予報士の常盤勝美です。当社では毎月、スーパーマーケットとドラッグストアで前年に対し売上を伸ばしたカテゴリのランキングTOP20を発表しています。2024年2月26日に発表した2024年1月版のうち、ドラッグストアでは、5位に「ファミリーアイス」カテゴリがランクインしました。今冬はほぼ全国的に記録的な暖冬で、1月も気温の高い時期が多かったことが要因と考えられます。そのあたりをデータで詳しく検証してみました。

https://www.truedata.co.jp/release20240226 より

2023年と2024年の1月の気温比較

2023年1月の気温は東日本で平年より高め、西日本と南西諸島で平年並、北日本では平年より低めでした。1月中旬は各地とも記録的な高温でしたが、下旬は強烈な寒気が南下し全国的に低温となりました。寒気の入り込みが北日本で強く東日本ではやや弱かったため、月間気温傾向も北日本で低め、東日本で高めとなったというわけです。

それに対して2024年1月の気温は、南西諸島で高め、それ以外の全ての地域ではかなり高めでした。前年同様、下旬に強い寒気が南下したものの、規模がやや小さく、低温の期間が短めだったため、月間の気温傾向に与えるインパクトは小さかったようです。

2023年1月の平均気温平年差(℃) (気象庁より)
2024年1月の平均気温平年差(℃) (気象庁より)

「ファミリーアイス」の売上と気温の関係

ここで「ファミリーアイス」の売上と気温の関係を改めて確認するために相関係数を求めました。相関係数とは、二者の関係性の強さを示す統計的指標です。値は-1~1の範囲に必ずおさまり、0に近ければ近いほど二者の関係性が弱く、1(逆相関であれば-1)に近ければ近いほど関係性が強いことを示します。「ファミリーアイス」と気温(最高気温・最低気温)の相関係数を計算したところ、約0.95でした。気温が高ければ高いほど売上が上がる、非常に強い関係があるといえます。

「ファミリーアイス」の買物指数予測モデル!

売上と気温の間に非常に強い関係があることから、気温を変数(x)として「ファミリーアイス」の買物指数(y)を求める予測モデルを、Excelソフトの機能を使って求めてみました。ここで気温は、その月を代表する値として、平均気温(日平均気温の月平均値)を用います。今回は、計算しやすいようにシンプルな一次関数で予測モデルを立てています。

図 気温とファミリーアイスの買物指数の関係

近似式に2023年と2024年の気温の値を代入

上で求めた需要予測モデル(y=0.3148x+1.6256)のxに、2023年1月及び2024年1月の東京における平均気温(2023年:5.7℃、2024年:7.1℃)をそれぞれ代入すると、2023年1月に対する2024年1月の買物指数の割合が計算できます。実際に計算してみるとその割合は1.13、つまり気温の影響による2024年1月の「ファミリーアイス」の昨対比は113%と試算できました。

実際のデータでは、冒頭の図で示したとおり、2024年の「ファミリーアイス」の対前年同月比売上は114%でしたので、「ファミリーアイス」の売上が前年に比べて伸長しドラッグストア部門で5位に入ったのは、気温が高かった影響である可能性が極めて高いことになります。

まとめ

今回は「ファミリーアイス」の買物指数と気温の相関係数が極めて高く、両者の関係性が非常に強いことが分かったので、気温を変数とした買物指数予測モデルだけでも比較的精度の高い試算をすることができました。本来は気象条件以外にも、価格やキャンペーンの程度などの影響も受けるので、それらも複合的に加味して対前年比売上を考察する必要があります。

※抽出データ                                   株式会社True 株式会社True Data「ドルフィンアイ」に搭載されている、「ファミリーアイス」カテゴリ(業態:ドラッグストア、エリア:全国、期間:2022年3月1日~2024年2月29日、データ抽出日2024年3月12日)の月次の買物指数。(買物指数は来店者100万人における購入金額)。

本ブログに対するご意見、ご感想、気象と消費データに関するお問い合わせ等は、お気軽にこちら(https://www.truedata.co.jp/contact)までお寄せください。

株式会社True Data 流通気象コンサルタント 常盤 勝美
〈プロフィール〉
大学で地球科学を学び、民間の気象会社で約20年にわたりウェザーマーチャンダイジング関連サービスに従事。2018年6月、True Dataへ入社し、気象データマーケティングを推進。著書に『だからアイスは25℃を超えるとよく売れる』(商業界)など。気象予報士、健康気象アドバイザー。