こんにちは。True Data流通気象コンサルタント・気象予報士の常盤勝美です。皆さんは雪の降る日、どのようなことを感じますか。憂鬱に感じる人、うんざりする人、何となくわくわくする人、様々な感じ方があるかと思います。ちなみに、大雪が予想されるとき、何が売れるか、考えたことはありますか。今回は、雪にはあまり慣れていない地域において大雪が予想されるときに、主に食品スーパーマーケットで良く売れる食料品について、調べてみました。
少し前に話題になった「台風接近の予報が出るとコロッケが売れる」という話を聞いたことがある方もいるかもしれません。似たような話は大雪予報でも言われていて、「大雪の予報が出ると肉が売れる」という説があるのです。
関東でまとまった雪が予想された2事例
今回データ分析に活用した降雪機会は、2022年2月10日と2023年2月10日の2事例です。2年連続で同じ日付なのは偶然です。いずれのケースも前日に国土交通省から雪に関する注意喚起情報が緊急に発表されました。人々が事前に雪に備える行動を取ることができたわけです。
大雪前日の肉の購買状況
当社True Dataの購買分析ツール『Eagle Eye』で、精肉部門の主要7カテゴリの日別購入金額推移を見てみました。ここで、日別でデータを集計する場合、曜日によって来店客数に違いがあることが多いため、購入金額も曜日による波が見られることがあります。そこで今回は曜日による違いの影響を取り除くため、それぞれ曜日平均値に対する比率を計算しました。つまり、「通常の〇曜日と比べてどれだけ購入金額が跳ね上がったか」という捉え方ができるため、大雪の予報に対応して特需が発生したかどうか、類推することができます。まずはその一例を時系列データで示します。
こちらは豚肉の中でも「輸入豚」のカテゴリの、2022年2月の購入金額の推移グラフです。これを見ていただくと分かるように、明らかに大雪の前日、2月9日に購入金額が跳ねていることが分かります。精肉主要7カテゴリ(牛肉:和牛・国産牛・輸入牛、豚肉:国産豚・輸入豚、鶏肉:国産鶏・輸入鶏)において、2022年、2023年2月9日の曜日平均値(※1)に対する割合を平均した“大雪跳ね上がり率”を計算したところ、いずれも通常に比べて16~56%の伸びが見られていて、大雪が予想される前日、精肉類を買い求める駆け込み需要が発生することは間違いなさそうです。
※1 本分析では、各年1月1日~3月31日までの期間で曜日平均値を求めました。
なぜ、大雪が予想されているときに肉が売れるのか
大雪が予想されているときに肉が売れる明確な理由が解明されているわけではありません。想定される要因として、冬季はスタッドレスタイヤが当たり前の雪国とは異なり、雪に不慣れな太平洋側の地域では、積雪によって2~3日程度、車で買い物に出かけることが難しくなることが挙げられます。普段は頻繁に買い物に行くお客様が、肉をはじめとする食材を2~3日分まとめ買いし、適宜冷凍保存するなどして、その先数日分の献立に利用する、という考察が最も確からしいと筆者は考えています。
実際に大雪にならなかった場合は?
今回分析に用いた事例では、結果的に大雪にならなかった地域もあります。
2022年2月10日木曜日は、朝から降っていたみぞれが夕方から本格的な雪に変わって深夜まで降り続き、最大2㎝の積雪を記録しました。一方2023年2月10日金曜日は朝から雪が降り始め、東京23区では一時大雪警報(積雪が10㎝以上に達するおそれ)が発表された地域もありましたが、昼過ぎには雨に変わり、結局東京の気象台では積雪は観測されませんでした。それでも、肉の売上は大きく伸びました。大雪前日に備えとしての駆け込み需要が発生するため、結果的に当日大雪にならなくても売上は伸びると考えられます。
※抽出データ 株式会社True 株式会社True Data「イーグルアイ」に搭載されている、「和牛」「国産牛」「輸入牛」「国産豚」「輸入豚」「国産鶏」「輸入鶏」カテゴリ(業態:スーパーマーケット、エリア:東日本、期間:2022年1月1日~2023年3月31日、データ抽出日:2023年12月19日)の日次の購入金額。
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株式会社True Data 流通気象コンサルタント 常盤 勝美
〈プロフィール〉
大学で地球科学を学び、民間の気象会社で約20年にわたりウェザーマーチャンダイジング関連サービスに従事。2018年6月、True Dataへ入社し、気象データマーケティングを推進。著書に『だからアイスは25℃を超えるとよく売れる』(商業界)など。気象予報士、健康気象アドバイザー。