こんにちは。流通気象コンサルタント・気象予報士の常盤勝美です。農作物の値段はその時の需給のバランスによって大きく上下することがあります。需給のバランスが崩れる要因の一つが天候です。今夏から秋にかけて、猛暑、長引く残暑などの影響で農作物の生育にも影響が生じ、それが購買動向の変化にもつながりました。今回はその一例として、この秋、価格高騰が話題となっているトマトの購買動向を調べてみました。
トマトの購買動向
図1は、当社購買分析ツール「イーグルアイ」で調査した、食品スーパーマーケットにおけるトマトの売上(購買指数※)と最高気温週平均値の時系列データです。
季節によって多少、売上の上下の波があるようですが、今年の9月中旬以降、昨年と比較した売上の落ち込みがはっきり分かるようになり、10月中旬以降は売上の落ち込み度合いが一層大きくなっているようです。
トマトの売上と気温の関係を散布図(図2)でも見てみると、比較的ばらつきの小さい右肩上がりのプロットになっています。つまり、気温が高ければ高いほどよく売れるという意味です。ただ7月は気温の割には売上がやや少なくなる傾向が見られました。気象条件的背景だけを考えれば梅雨の天候の影響かという仮説が立てられますが、産地や収穫期など別の要因も影響しているのかもしれません。その中で今年10月(図2の中での一部の黄色のプロット)は、明らかに他のプロットとは離れたところに位置しており、気温の割には売上が少なかったようです。
図3は、トマトの単価(購入金額÷購入個数)の時系列データです。9月中旬頃から、目に見えて単価が上昇しています。農林水産省発表の「食品価格動向調査(野菜)」によると、10月23日週のトマトの1キログラム当たり単価は、統計の残る2010年以降における最高値を記録しました。当社購買データに基づくトマトの単価推移も、それと矛盾のない結果となっています。
同じく農林水産省発表の「野菜の生育状況及び価格見通し(令和5年11月)について」によると、トマトの価格高騰の要因は、8月から9月にかけての高温等の影響による一部産地での小玉傾向や前倒しの出荷、歩留まりの低下とされています。長引く残暑によって生育が不順だっただけでなく、産地リレーのタイミングが合わず、9月中旬以降一時的に供給過少になったということのようです。
まとめ
今夏の記録的猛暑、途切れない暑さ、長引く残暑は、我々に様々な教訓をもたらしたと、私は考えています。地球沸騰化時代の到来によって、今後も今夏と同じような気候となることは十分考えられます。今夏の様々なアイテムにおける購買動向データを、どのように将来に活かせるかという観点で、引き続き細かく分析していきたいと思います。
※抽出データ 株式会社True 株式会社True Data「イーグルアイ」に搭載されている、「野菜_果菜類_トマト」カテゴリ(業態:スーパーマーケット、期間:2021年11月1日~2023年10月29日、データ抽出日2023年11月17日)の週次の購買指数(※購買指数は週別購入金額の当該期間平均値を1としたときの比率)。
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株式会社True Data 流通気象コンサルタント 常盤 勝美
〈プロフィール〉
大学で地球科学を学び、民間の気象会社で約20年にわたりウェザーマーチャンダイジング関連サービスに従事。2018年6月、True Dataへ入社し、気象データマーケティングを推進。著書に『だからアイスは25℃を超えるとよく売れる』(商業界)など。気象予報士、健康気象アドバイザー。