こんにちは。流通気象コンサルタント・気象予報士の常盤勝美です。食事のときや喫茶店に入ったとき、夏の暑い陽気の日は冷たい飲み物を飲み、冬の寒い陽気の日は温かい飲み物を飲むのが一般的かと思います。ではコーヒーを例に、ホットコーヒー、アイスコーヒーへの興味関心が入れ替わる温度は何℃くらいか、True Dataの購買データから仮説を立ててみたいと思います。
用いたデータ
一般的な購買データでは“アイスコーヒー”“ホットコーヒー”という区分けでのカテゴリはありません。そこで、アイス用に購入されることが多い商品の集まったカテゴリと、ホット用に購入されることが多い商品の集まったカテゴリを選び、本分析に用いるデータとしました。
“アイスコーヒー”を示すカテゴリとしたのは「コーヒードリンク」です。このカテゴリに含まれる商品は、液体のコーヒーが紙パックや缶、ペットボトルに入っているものがほとんどです。常温で売られているものもありますが、家庭では基本的に冷やして飲むことが多い商品が集まっています。
一方“ホットコーヒー”を示すカテゴリとしたのは「レギュラーコーヒー」です。基本的にコーヒー豆あるいはそれを挽いて粉状にしたものと考えていただくと良いでしょう。お湯を注いでフィルターで濾したものを飲みます。そのあと氷を入れてアイスで飲む飲み方もありますが、基本的にはホットで飲むことが多いでしょう。
「コーヒードリンク」の売上と気温の関係
まず「コーヒードリンク」の売上と気温の関係を見てみます。図1は「コーヒードリンク」の売上の年間推移がわかる時系列グラフです。夏場に売上が高く、相対的に冬場は売上が低いことが分かります。売上と気温の関係を示した散布図で確認すると、気温が高ければ売上も高く、気温が低ければ売上が低いという分かりやすい関係です。プロットのばらつきも小さいため、一般的な傾向として、気温以外の変動要因の影響はそれほど大きくないと考えられます。つまり、季節はそれほど関係なく、最高気温が20℃の日は買物指数がおおむね15百万円になるということです。
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「レギュラーコーヒー」の売上と気温の関係
続いて、「レギュラーコーヒー」について見てみます。「コーヒードリンク」とは反対に、夏場の暑い時期に売上が低く、冬場の寒い時期に売上が高いグラフになっています。散布図で確認しても、「コーヒードリンク」とは反対に、右肩下がりのプロットになっています。プロットのばらつきは「コーヒードリンク」同様、小さいようです。
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年間平均値との比較
「コーヒードリンク」「レギュラーコーヒー」ともに散布図上ではプロットがほぼ直線的な分布となっており、どこかの温度がきっかけになって売り上げの伸びが急に大きくなったり小さくなったりということはなさそうです。そこで、便宜的に売上の年間平均水準との比較を考えます。売上が年間平均より多ければ需要の多い温度帯、年間平均より少なければ需要の少ない温度帯とみなし、その目安が何℃くらいかを把握するためです。
「コーヒードリンク」「レギュラーコーヒー」ともに目検討ですが、だいたい22~23℃くらいの温度帯でプロットが年間平均値とクロスしていることがわかりました。
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まとめ
「コーヒードリンク」「レギュラーコーヒー」それぞれ売上規模が異なるため、単純に温度によって「コーヒードリンク」⇔「レギュラーコーヒー」に需要がシフトするとは言えません。しかし、興味の入れ替わるおおよその目安温度として、最高気温22~23℃ということは言えそうです。参考までに、秋から冬にかけて各地で最高気温の平年値が23℃を下回る時期を表で示します。この頃を、ホット⇔アイスの切り替えの一つの目安とすると良いでしょう。
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※抽出データ 株式会社True 株式会社True Data「ドルフィンアイ」に搭載されている、「コーヒードリンク」「レギュラーコーヒー」カテゴリ(業態:ドラッグストア、期間:2021年1月4日~2023年1月1日、データ抽出日2023年1月10日)の週次の買物指数(買物指数は来店者100万人における購入金額)。
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株式会社True Data 流通気象コンサルタント 常盤 勝美
〈プロフィール〉
大学で地球科学を学び、民間の気象会社で約20年にわたりウェザーマーチャンダイジング関連サービスに従事。2018年6月、True Dataへ入社し、気象データマーケティングを推進。著書に『だからアイスは25℃を超えるとよく売れる』(商業界)など。気象予報士、健康気象アドバイザー。