こんにちは。True Data流通気象コンサルタント・気象予報士の常盤勝美です。2022年も残りわずか。今年1年の天候、皆さんはどのような印象をお持ちでしょうか。非常に簡単に振りかえると、冬は寒く、夏は暑い1年でした。実際にはそれに加え、体感的に陽気の寒暖差が激しかったという印象が強く残っている方もいらっしゃるかもしれません。 今回はお天気マーケティングの観点で、私、常盤勝美が独断で今年2022年の2大ニュースをまとめました。
第1位 早い梅雨明け発表で、スポーツドリンクなどが爆発的伸び
2022年、お天気マーケティング的に最も印象的だったのは、6月下旬のほぼ全国的な晴天と記録的高温の継続でしょう。6月23日頃から、日本付近で梅雨前線の活動が不活発になっていき、太平洋高気圧力が日本列島に強く張り出して、晴天と気温の非常に高い状態をもたらしました。6月25日には、国内観測史上最も早い時期に40℃を超える気温が群馬県伊勢崎市で観測されました。また東京都心でも6月25日~7月3日にかけて、9日間連続で最高気温が35℃以上の猛暑日を記録しました。その中、気象庁は6月27日~29日にかけて、速報段階で九州~東北南部にかけての各地方に梅雨明けを発表しました。
その後気象庁による事後解析によって梅雨明けの確定値は速報値より1か月程度遅い日付となりましたが、6月下旬の記録的高温は消費にも大きなインパクトをもたらしました。
各地域で気象台から梅雨明けが発表された6月27日からの1週間は、前年同週に比べて購入金額が大幅に高くなったカテゴリがありました。下表にてその一部を紹介します。
第2位 鹿児島県に非常に強い勢力で台風上陸、水などで特需
人々の生活や行動に大きな影響を与えることがある台風、2022年は3つの台風(4号、8号、14号)が日本に上陸しました。このうち、9月18日に鹿児島県鹿児島市付近に上陸した台風14号は、上陸時の勢力が「非常に強い」ものでした。数日前の早い段階から、報道等で台風への厳重な警戒が呼びかけられ、また前日17日には気象庁が、鹿児島県に暴風、波浪、高潮の特別警報を発表しました。
実はこの特別警報は「台風等を要因とする」もので、「雨を要因とする」大雨特別警報とは発表条件が少し異なります。伊勢湾台風級(中心気圧930hPa以下または最大風速50m/s以上[※])の台風や同程度の温帯低気圧が来襲する場合に発表されるもので、まだ対象地域で顕著な暴風、波浪、高潮が観測されていなくても発表されます。気象庁は2013(平成25)年8月に特別警報の運用を開始しましたが、「台風等の要因による」特別警報が沖縄地方以外で発表されたのは今回が初めてです。
[※] 沖縄地方、奄美地方及び小笠原諸島は中心気圧・最大風速の発表基準が少し異なります。
このような未曾有の台風接近だったため、直前には台風に備えるために、九州を中心として主に西日本で水(飲料水)の需要が大きく跳ね上がりました。前年同週と比較した買物指数の伸びは、九州で約170%、中四国で約150%、近畿で約138%でした。
なお、関東地方では、台風が少し離れた位置を進み、直接的な影響はそれほど大きくありませんでした。当週の水の買物指数は前週とほぼ同水準、前年と比較しても約110%と、目立った買物指数の伸びは見られませんでした。
来年(2023年)は?
気象庁から12月9日に発表された「エルニーニョ監視速報」によると、2022年にずっと発生していたラニーニャ現象が、今冬の終わりとともに終息する見通しが示されています。そして春以降、確率はまだ低いもののエルニーニョ現象発生の可能性もあるようです。エルニーニョ現象・ラニーニャ現象の発生状況だけを考えると、2023年の天候は2022年と少し異なる状況が想定されます。1980年代以降2000年代にかけて、西暦の下一桁が3や8の年は夏の天候が冷夏傾向になりやすいといった5年周期あるいは10年周期の気候サイクルがあるのではないかと言われていました。直前の2013年の夏はほぼ全国的に猛暑傾向だったため、その周期性は崩れているとも考えられますが、ただ、今後のエルニーニョ現象発生状況によっては、あながち2023年夏の天候不順の可能性も否定できないところです。
少なくとも2022年の2大ニュース第1位で紹介したような早い夏の訪れは、2023年は考えにくいですが、第2位のような、勢力が非常に強い状態での台風接近は、2023年も引き続き警戒・準備しておくべきでしょう。2023年2月21日、気象庁から発表される暖候期予報に注目し、夏や梅雨の天候を想定してMDに活用いただきたいと思います。
※抽出データ 株式会社True 株式会社True Data「ドルフィンアイ」に搭載されている、「パーソナルアイスその他」「ファミリーアイス」「水」「麦茶」「日本茶・麦茶ドリンク」「果汁飲料」「紅茶ドリンク」のカテゴリ(業態:スーパーマーケット、エリア:全国)、及び「スポーツドリンク」「UVケア・サンタン」「男性用制汗防臭剤」「制汗防臭剤」「殺虫薬」のカテゴリ(業態:ドラッグストア、エリア:全国)、さらに「水」カテゴリ(業態:スーパーマーケット、エリア:九州、中四国、近畿、関東)の、週次(期間:2020年12月7日~2022年12月4日、データ抽出日:2022年12月14日)の買物指数(買物指数は来店者100万人における購入金額)。
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株式会社True Data 流通気象コンサルタント 常盤 勝美
〈プロフィール〉
大学で地球科学を学び、民間の気象会社で約20年にわたりウェザーマーチャンダイジング関連サービスに従事。2018年6月、True Dataへ入社し、気象データマーケティングを推進。著書に『だからアイスは25℃を超えるとよく売れる』(商業界)など。気象予報士、健康気象アドバイザー。