「はんぺん前線」「しもやけ・あかぎれ用薬前線」南下開始

こんにちは。流通気象コンサルタント・気象予報士の常盤勝美です。二十四節気の立秋を過ぎ、季節はどんどん秋冬に向けて進んでいきます。皆さんは、どのようなことで秋が近づいていることを実感しますか。ツクツクボウシの鳴き声、夜の虫の声、赤とんぼ、コスモスやハギの花、少しずつ早くなっている日の入り時刻、熱帯夜からの解放…、などなど様々あると思います。

お店に陳列してある商品の品揃えから、秋を感じる人もいるのではないでしょうか。今回は、季節商品の売れ行き予想をもとに「商品前線」を作成して、今年の動きについて解説します。

商品前線活用術

商品前線とは、売上の季節性が大きい商品に対して、どのような温度条件になったときに売上が急増・ピーク・下降トレンドに移行するのかを求め、その条件と季節予報から今年は実際にどのエリアでいつ頃から売上が変化するのかを、日本地図に桜の開花前線のように投影して示したものです(詳しくはこちら)。

商品を作るメーカーサイドとしては、エリア別の在庫管理、配送・配荷計画、販促プロモーション時期の策定など立案に役立ちます。商品を売る小売サイドとしては、商品の仕入れを増やしたり減らしたりする目安時期の把握や特売計画、店頭で掲示するPOPとして来店客に訴求する方法もあります。

今回は、食料品部門から「はんぺん」、日用品部門から「しもやけ・あかぎれ用薬」の急増に対応する商品前線を作成しましたので、ご紹介します。

「はんぺん前線」解説

練り製品の分類に属する「はんぺん」。料理ではそのまま食べたり、はさみ揚げなどに使われたりすることがありますが、真っ先に思い浮かぶのはおでんの具材でしょう。おでんは秋冬を代表するメニューですので、「はんぺん」の売上も秋から伸び始めます。

図1 はんぺん前線

図1は今年(2022年)の、予測に基づく「はんぺん前線」です。最も早い北海道で8月から「はんぺん前線」の南下が始まります。そして9月上旬には一気に中四国方面まで南下しますが、関東~東海はやや遅れて9月中旬です。下旬に入ると九州地方に達します。約1か月程度で一気に日本列島を南下することがわかります。それでも今年は8~9月の気温が全国的に平年より高い予想となっているため、南下時期は全般に例年より5~10日程度遅れる見通しとなっています。

「しもやけ・あかぎれ用薬前線」の解説

冬場、気温が下がり、また空気の乾燥が進むと、しもやけやあかぎれの症状が出やすくなります。そのための薬も、気温や湿度の低下に合わせて売上が伸びる代表的な商品です。

図2 しもやけ・あかぎれ用薬前線

図2は今年(2022年)の、予測に基づく「しもやけ・あかぎれ用薬前線」です。気温だけでなく空気の乾燥も影響することから、「はんぺん前線」よりやや遅い南下開始となっています。こちらの前線の面白い特徴は、北日本では日本海側より、太平洋側の方が前線到達の時期が早いということです。冬季は、北日本の日本海側では雪や雨の降る日が多く、乾燥の度合いは太平洋側の地方の方が顕著であるため、前線到達の時期が早いと考えられます。一方西日本は、太平洋側よりは日本海側の地方の方が前線の到達が早くなっています。雪の量がそれほど多くない西日本では、より気候が寒冷な日本海側の地方の方が、前線到達が早くなるものと考えられます。ちなみにこれらの前線も、例年より5~10日程度遅れての到達の予想です。

”商品前線異常あり”

1990年代以降急速に進んでいるとされる地球温暖化や建物の建築技術の進化、それに伴う近年の住環境・生活環境等の変化によって、この前線の形や進行速度も、以前の常識的認識が通用しない場合があります。月刊商人舎2022年8月号でも執筆させていただきましたが、”商品前線異常あり”ともいうべき状況が生じている可能性があります。

なるべく最新のデータに基づいて気象条件との関係を分析し、前線到達時期を見極めた上での活用を心がけたいものです。

活用上の注意事項

なお、今年の前線はこれで確定ではありません。今後の天候の推移によっては進行(秋冬物の商品前線の場合は南下のことが多い)速度が速くなったり遅くなったりする可能性があります。その部分は気象庁から定期的に発表される季節予報(1か月予報、3か月予報など)で補完していってください。

  • 1か月予報・・・毎週木曜日の14時半頃発表
  • 3か月予報・・・毎月19~25日の間の火曜日に発表                           (2022年の例では、8月は22日、9月は20日、10月は25日)

※抽出データ                                   株式会社True 株式会社True Data「ドルフィンアイ」に搭載されている、「はんぺん」(業態:スーパーマーケット)及び「しもやけ・あかぎれ用薬」カテゴリ(業態:ドラッグストア)の、週次(期間:2020年8月10日~2022年8月7日)の買物指数(買物指数は来店者100万人における購入金額)。

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株式会社True Data 流通気象コンサルタント 常盤 勝美
〈プロフィール〉
大学で地球科学を学び、民間の気象会社で約20年にわたりウェザーマーチャンダイジング関連サービスに従事。2018年6月、True Dataへ入社し、気象データマーケティングを推進。著書に『だからアイスは25℃を超えるとよく売れる』(商業界)など。気象予報士、健康気象アドバイザー。