こんにちは。流通気象コンサルタント・気象予報士の常盤勝美です。2021年10月は時期による気温変化の大きい1か月でした。「商人舎流通スーパーニュース」によると、10月の月次の売上は衣料品部門を中心に季節商品が苦戦したところが多い感じがします。実際、10月の天候が季節商品にどの程度の影響を与えたのか、また今回の分析からどのような気づきが得られるのか、手元にあるデータから簡易的に調べてみました。
2021年10月の天候実績
はじめに、2021年10月の天候を振り返ります。図1は10月の平均気温の平年差を示した全国マップです。これを見ると、確かに全国的に気温は平年より高めで、特に東海以西では高めの所が多かったものの、関東以北では平年を上回った幅はそれほど大きくないように見えます。
そこで、10月1か月の中での気温変動の図2を見てみます。
こちらの10月のグラフに注目すると、前半は全国的に高温で、特に西日本では顕著な高温でした。一方後半は、全国的に低めの時期が多くなっています。つまり時期によって気温変化の大きい1か月でしたが、1か月トータルでのデータで見ると、全般に気温は平年を上回り、特に東海以西では平年と比べ、気温の低い傾向よりも、気温の高い傾向が強くみられる結果となりました。
「使い捨てカイロ」の売れ行きはどうだったか
この時期、需要の大きな伸びが見られる代表選手「使い捨てカイロ」のデータで10月の売れ行きを検証していきます。具体的な気温との関係性をより明確に把握できるよう、今回は関東所在のドラッグストアでの購買データを用いています。
図3は、2019年~2021年の9月・10月における「使い捨てカイロ」の購入金額と、最低気温について示したものです。購入金額の縦軸の具体的な数字は表示していませんが、この3年間のグラフの関係性という観点から見てください。
確かに今年2021年(緑色)は、購入金額が大きく伸びた時期が、2019、2020年と比べて遅かったようです。一方10月後半の週では2019、2020年と比べて高い売上を示しています。
ここで、10月の傾向を掴むため、データ掲示5週間分の購入金額合計値で比較します(表1)。
10月1か月の平均気温が2021年より0.7℃低かった2020年と比べて、購入金額は約10%下がったようです。ただし10月の平均気温が2021年より1.2℃高かった2019年と比べると、購入金額は8%近く高くなりました。10月後半の冷え込みで幾分取り戻したものの、今年は前年に比べると苦戦を強いられたようです。
ここから学びたいこと
今年10月、「使い捨てカイロ」の売上は前年より苦戦が強いられましたが、高めの気温に対応し、例えば殺虫剤や飲料、UVケア用品など、「使い捨てカイロ」の以外の商品を積極的に売り込んでいれば、そちらの売上増で「使い捨てカイロ」の売上落ち込みをカバーできていたかもしれません。では、どのタイミングで「使い捨てカイロ」の売上の急増を見込んで売場づくり・品揃えを強化すれば良いか、目安的な指標はこの分析結果から読み取れるでしょうか。
少なくとも気温と売上の間に強い関係性があることは分かります。ただし、売上が伸びるタイミングと気温の関係が少し不鮮明な感じもします。
そこで、売上との比較対象として、各週の中で気温の最低値を見てみました。すなわちその週、どの程度の冷え込みがあったかを見てみます。
そうすると、少し関係性が明確に見えていきます。具体的には図5に示すように、気温が15℃を下回るような冷え込みがあった週の翌週に売上の大きな伸びが見られています。
今回は関東に限った例ですが、各地のデータで同様に検証を行えば、その地域において何℃まで冷え込んだとき、「使い捨てカイロ」の需要に大きな伸びが見られるか、分かることでしょう。
※抽出データ 株式会社True Data「イーグルアイ」に搭載されている「使い捨てカイロ」」の購入金額(ただし、数値は非表示)。
「〇℃になったら売上が急増する商品」―よく耳にする表現です。気象のデータは気象庁のホームページからダウンロードできますので、ご自身の店舗のデータでこのような目安温度を調べ、表としてまとめることもできます。このようないわゆる「ウェザーMD表」、皆さんも是非作ってみませんか。
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株式会社True Data 流通気象コンサルタント 常盤 勝美
〈プロフィール〉
大学で地球科学を学び、民間の気象会社で約20年にわたりウェザーマーチャンダイジング関連サービスに従事。2018年6月、True Dataへ入社し、気象データマーケティングを推進。著書に『だからアイスは25℃を超えるとよく売れる』(商業界)など。気象予報士、健康気象アドバイザー、地球温暖化防止コミュニケーター。