前年とは対照的!2021年7月~8月の天候と購買動向

こんにちは。流通気象コンサルタント・気象予報士の常盤勝美です。皆さんはこの夏の天候の印象をどのようにお感じになりましたか?猛暑だったと感じた方、雨が多かったと感じた方、涼しかったと感じた方、様々だと思います。確かに時期によって、地域によって、気候に大きな差がありました。気象庁が2021年9月1日に発表した報道資料によると、今年の夏(6~8月)は北日本でかなり高め(記録的猛暑)、東日本で高め(猛暑)、西日本及び南西諸島では平年並の天候でした。ただしこれは3か月間のデータをならして見た評価であり、細かく見ると地域によって、時期によって天候が劇的に変化していました。今回は特に7、8月の2か月間に絞って、その変化と昨年(2020年)の天候を対比させ、購買動向にどのような違いが見られたか検証していきます。

2021年と2020年の7月、8月の天候

7月、8月それぞれについて、2020年と2021年の天候を比較します。

●7月

2020年の7月は北海道と南西諸島を除き低温傾向でした。同様に降水量は多め、日照時間は少なめという結果でした。当時を振り返ると、全国的に梅雨が長引き、月の前半には熊本県をはじめとして西日本各地で記録的な大雨に見舞われ大きな被害が発生しました。また東海以北の地方では7月中の梅雨明け発表がありませんでした。それに対し、2021年の7月は九州や四国、南西諸島の一部を除いて気温は平年並か高め、特に北日本では記録的な高温となりました。降水量は、梅雨明けが平年より早いところが多かった影響などあり、全体的には少なめでしたが、月の初めに東日本(静岡県や関東南部)中心に梅雨末期の大雨に見舞われ、それらの地域では多めとなりました。日照時間はほぼ全国的に平年より多めでした(図1参照)。

図1 2020年(左)と2021年(右)の7月の天候実績(上:気温、中:降水量、下:日照時間)
(出典:気象庁HP)

●8月

2020年の8月は、7月とは打って変わって猛暑が続き、気温は全国的に平年より高めでした。東京都心では8月としては観測史上最多の11回の猛暑日(最高気温35℃以上)を記録するほどでした。太平洋高気圧に覆われることが多く、台風接近も少なく、降水量は平年より少なめ、日照時間は平年より多めとなりました。

2021年の8月は上旬、7月に引き続き全般に猛暑傾向でした。しかし、台風9号が上陸、また台風10号が関東の南東海上をかすめて進んだ後の中旬は、日本付近に秋雨前線が停滞して活動活発化。強めの雨が降り続き、北海道を除く広い範囲で大雨となりました。その影響で気温は平年を大幅に下回り、また日照時間はかなり少なくなりました。下旬は多少残暑がぶり返したものの、月間での気温は平年並か、西日本ではやや低め。降水量は北海道を除いて多く、日照時間は北海道を除いて少なくなりました(図2参照)。

図2 2020年(左)と2021年(右)の8月の天候実績(上:気温、中:降水量、下:日照時間)
(出典:気象庁HP)

つまり、7~8月の気温傾向は、北海道など一部を除いて、2020年と2021年とではほぼ反対の傾向だったということができます。表にまとめます。

表1 2020年と2021年の天候差
※凡例
+*:平年より平均気温がかなり高い、または降水量/日照時間がかなり多い
+:同、平年より高いまたは多い
±:同、平年並
―:同、平年より低いまたは少ない
―*:同、平年よりかなり低いまたはかなり少ない

気温傾向が異なれば、購買動向にも2020年と2021年とで違いが見られました。それを以下に検証していきます。

購買動向が対照的だったカテゴリ① スポーツドリンク

気温が高ければ高いほど購入数が多くなる代表カテゴリのスポーツドリンクで、7~8月の購買動向を振り返ります。

図3 スポーツドリンクの買物指数と最高気温(右は各年6~8月のデータ抜粋)
※抽出データ:全国エリアにおけるカテゴリ「スポーツドリンク」の週次の買物指数。抽出期間は2019年9月2日~2021年8月29日。
(出典:True Data 「ドルフィンアイ」/業態:スーパーマーケット)

スポーツドリンクは図3左のように、気温が高ければ高いほど買物指数が高く、特に高温度帯では気温上昇とともに買物指数が指数関数的に伸びていく特徴があります。それを踏まえて2020年と2021年の買物指数の動きをみると、気温傾向に連動する形で、2020年は8月に買物指数のピークを迎えたのに対して、2021年はピークが7月だったことが分かります。

購買動向が対照的だったカテゴリ② チョコレート

2つ目に紹介するカテゴリがチョコレートです。チョコレートはバレンタインデー前に突出した買物指数になりますが、その期間を除外したとき、図4のとおり気温が一定以上の高い水準となると購入数が伸び悩み、気温が低めのときに購入数が伸びる傾向があります。図4右のように2021年は、昨年2020年とは反対の買物指数を示しています。つまり低温だった2020年7月と、ほぼ平年並だった2021年8月は買物指数が高めだったものの、高温傾向だった2020年8月と2021年7月は買物指数が低くなっています。

図4 チョコレートの買物指数と最高気温の推移(右は各年6~8月のデータ抜粋)
※抽出データ:全国エリアにおけるカテゴリ「チョコレート」の週次の買物指数。抽出期間は2019年9月2日~2021年8月29日。
(出典:True Data 「ドルフィンアイ」/業態:スーパーマーケット)

このように、商品の購買動向は、気温傾向に正直に反応する場合が多くなっています。ここで気をつけなければならないのは、当年の販売計画を策定するときです。前年のデータを参考に、当年の計画を設定することが多いかと思います。ただし今回の7~8月のように、前年の天候とは対照的だった場合、前年の実績値を踏襲したままの計画を実行したら思うような成果が出せないという事態に陥る懸念があります。その部分の一助となるのが気象予測です。予報内容から目先の気温傾向を読み取り、ここで紹介したように気温と購買動向について分析した結果を反映した発注仕入れを行います。また、場合によっては販促計画の修正等を行うことでMDの精度を高めていただきたいと思います。

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株式会社True Data 流通気象コンサルタント 常盤 勝美
〈プロフィール〉
大学で地球科学を学び、民間の気象会社で約20年にわたりウェザーマーチャンダイジング関連サービスに従事。2018年6月、True Dataへ入社し、気象データマーケティングを推進。著書に『だからアイスは25℃を超えるとよく売れる』(商業界)など。気象予報士、健康気象アドバイザー、地球温暖化防止コミュニケーター。