2020年1月の記録的高温によって売れたもの、売れなかったもの

2020年1月の天候を振り返る

2020年1月、日本付近はいわゆる西高東低の冬型の気圧配置になることが少なく、月間の平均気温は各地で記録的な高さでした。気象庁が2月3日に発表した報道資料「1月の天候」によると、東日本(関東甲信、北陸、東海)と西日本(近畿、中国、四国、九州北部、九州南部)では、1946年の統計開始以降1月として最も高い気温を記録しました。

2020年1月の平均気温平年差(気象庁HPより引用)

1月の天候をもう少し詳しく分析すると…

1月の気温実績データなどをもう少し詳しく分析してみると、この1月の、特筆すべき天候の特徴がわかります。例えば東京では、4日(土)に初雪を観測し、18日(土)はほぼ終日みぞれ、27日(月)~28日(火)も多摩地方では大雪警報が発表されるなど、日中厳しい寒さとなる日もありました。最高気温が平年を下回った回数は9回で、確かに少なめですが記録的というほどではありません。それに対して、最低気温が平年を下回る強い冷え込みを記録したのは5日と28日の2回のみ。東京では2009年以来11年ぶりに気温が氷点下まで下がることのない1月となりました(※注 東京の気温の観測場所は2014年12月に、従来の大手町から現在の北の丸公園に移転しています)。

1月の好調・不調カテゴリを調べる

True Dataのドラッグストアの全国パネルデータから、この1月の買物指数と昨年1月の買物指数の差をカテゴリ単位に調べてみました。詳細な期間は、2019年12月30日から2020年1月26日までの4週間で、前年同週(2018年12月31日から2019年1月27日)データと比較しています。比較対象とする気象データ(最低気温)に関しては、便宜的に「東京」のものを用いています。

湿布薬は好調!

1月の高温の恩恵を受けたと想定される、買物指数が好調だったカテゴリは、「外用鎮痛・消炎薬(貼付・塗布薬)」すなわち湿布薬でした。当該4週間において、前年同週に比べて約7%の買物指数の伸びとなっています。

外用鎮痛・消炎薬(貼付・塗布薬)の買物指数と最低気温は、25℃以下の温度帯において正の相関があり、気温が高ければ買物指数も大きくなります。気温が高ければ外に出て積極的に体を動かす人の割合が多くなり、筋肉痛になる人の割合もそれに連れて増えて、湿布薬のニーズが高まるものと推察されます。高温傾向だった2020年は例年に比べて冷え込みが弱かった分、外で体を動かす人の割合が多かった、ということでしょうか。2020年に関してはそれに加えて、日本海側で記録的に雪の量が少なかったことも追い風になっていると考えられます。

強い冷え込みに反応するものは不調!

一方、昨年ほど買物指数が高くならなかったカテゴリもあります。天候の詳細分析からわかるようにこの1月、強い冷え込みがほとんどありませんでした。そのため、寒さがきっかけとなって消費ニーズが高まるカテゴリで買物指数が伸びませんでした。ここではその代表例として、「使い捨てカイロ」と「しもやけ・あかぎれ用薬」を取り上げます。

強く冷え込むことが少なかった2020年、使い捨てカイロの買物指数は振るわず、前年と比べて30%近い大幅な減少となりました。ちなみに当社のドラッグストアパネルのうち、北海道地区に限ってデータをみた場合、前年と比べて買物指数の落ち込みは約18%と、全国平均に比べれば小幅な減少ですみました。これは、北海道では1月1日~5日にかけて、気温が平年を下回る状態が続いたこと、その後の他の地方に比べれば高温の程度が幾分小さかったことが考えられます。

もう一つの例が「しもやけ・あかぎれ用薬」です。しもやけは寒暖差による血行障害、あかぎれは寒さや乾燥が原因となることがあるので、強い冷え込みがほとんどなかった2020年は買物指数が伸び悩んだことがグラフからはっきり分かります。2020年1月の4週間平均の買物指数は前年に比べて、やはり30%近い落ち込みとなりました。

1月の天候と買物指数実績から学ぶこと

この1月はほぼ全国的に記録的な高温となりました。異常気象といって差し支えないレベルです。気象庁の定義によると、異常気象とは原則として、「ある場所(地域)・ある時期(週、月、季節)において30年に1回以下で発生する現象」です。シンプルに考えるとこの先30年間は、今年ほどの顕著な高温となる可能性が低いということができます。しかしながらその統計的推論を信じて良いでしょうか。ご存じのように地球温暖化の進行により大気、海水の温度は年々上昇傾向にあります。この1月の高温は地球温暖化の一環によるものと考えるのが自然で、今年のような顕著な高温は、この先30年を待たずにまた起こる可能性が高いと考えるべきです。むしろ、また来年あるいは再来年に、今年のような顕著な高温となっても不思議ではありません。今後もまた頻繁に起こる可能性がある真冬季の高温にあたって、今年の実績データを是非より詳しく分析してみてください。そして、真冬なのに暖かい陽気が続くとき、消費者はどのような行動を取るのか、何のニーズが高まるのか、ナレッジとして蓄積しておくと良いでしょう。来年以降、事前の長期予報の中で1月の気温が高めと予想された場合、どのようなMD計画を立てたら良いか、重要なサンプルになるはずです。

なお、気温と販売動向の関係分析の仕方やデータの読み取り方、考察がよく分からない方は是非当社のセールス担当者にご相談ください!お悩み解決のお手伝いをさせていただきます!