今夏、７～８月は天候不順の可能性が示唆される長期予報となっています（気象庁５月24日発表３か月予報「https://www.jma.go.jp/jp/longfcst/000_1_10.html」参照）。昨夏は気象庁をして「災害級の暑さ」と言わしめるほどの記録的な高温だったところが多くありました。埼玉県熊谷市で最高気温41.1℃という国内歴代最高気温記録を更新したニュースはまだ記憶に新しいと思います。そうなると今夏は、少なくとも昨夏と比べて気温が低くなる可能性が非常に高いということが予想できます。
昨夏はその暑さの影響で、経口補水液、スポーツ飲料をはじめとした熱中症対策商品が大きく販売数を伸ばしました。
出典：True Data「Dolphin Eye」 ドラッグストア版
出典：True Data「Dolphin Eye」 ドラッグストア版
それ以外にも氷菓、冷やし中華、うなぎなど真夏向けの商品が軒並み非常によく売れました。
さて、今夏の消費動向はどうなるでしょうか。まずは一般的な人間生理の考え方に基づいて食料品の消費動向を占います。夏の暑さが厳しい場合、外気温が体温に近い水準まで上昇します。高温によって体に様々な異常を来たすことを本能的に嫌って、体温の上がり過ぎを回避する消費志向となります（下表参照）。
今年は「物足りない暑さ」になる予想も？
しかし今夏の場合、感じる暑さやそれに伴う上表のようなニーズは昨年より弱くなることが予想されます。むしろ過剰発注による在庫過多リスクも念のため考慮しておくべき商品と言えるでしょう 。それではもし今夏、長期予報どおりに「物足りない暑さ」となった場合、どういった商品が注目となりうるでしょうか。流通気象コンサルタントとして幾つかのキーワードを考えてみました 。
キーワード１ 小腹を満たす
昨夏のような厳しい暑さのときは、食欲がわかず、例えばビールと枝豆などのおつまみといった、簡単なメニューだけでも満足してしまう場合があります。しかしこの夏が昨年ほど暑くならない場合、それだけでは少し物足りなく感じるかもしれません。そこでもう一品、小腹を満たすようなメニューにチャンスがあることでしょう。注目商品は、小鉢向け和日配、水ようかん、ビスケット類、チョコアイスなどです。
キーワード２ じめじめを吹き飛ばす
空気中に含まれる水分量が同じ場合、常温帯では一般に、気温が高いときより気温が低いときのほうが湿度が高まります。すなわち今年は昨年より気温の上がり方の鈍い日が多いものの、湿度は昨年並みかそれ以上で、昨年以上にじめじめ、蒸し蒸しした空気を感じることが多いと予想されます。そんなとき人間は爽快さを求める感情が強くなります。のどごしの爽快感が得られる炭酸飲料（無味やビール・発泡酒など、あまり甘くない種類のもの）が注目商品です。
キーワード３ 季節に逆行した陽気のときに強いメニュー
夏に向けて気温が上がっていく時期なのに涼しい陽気の日、冬に向けて気温が下がっていく時期なのに暖かい陽気の日というように、季節に逆行した陽気のときに好まれやすいメニューがあります。一般には中華料理やイタリア料理、パン類などです。これらは気温が高すぎでも低すぎても販売数の伸び悩みが起こりやすい特徴があります。ということで、注目商品は中華総菜の素、パスタソース、食パン、ファットスプレッド（マーガリンなど）などです。
夏季全般といった、中長期スパンでの消費動向を掴むためにはこのようなウェザーマーチャンダイジングの知見が役に立ちますので、もう少し深く詳しく極めたい方は是非ご相談ください。商品の販売数と気象条件との関係分析から、MD企画・計画のためのコンサルテーションまで幅広くお手伝いさせていただくことが可能です。
一方、今日～明日、向こう１週間など、発注仕入れに活用するような、短期的な消費動向を掴むためには便利なツールをご用意しています。当社（True Data）が、気象情報会社最大手の（一財）日本気象協会と組んで2019年４月から始めた「売れドキ！予報」というサービスです（https://www.truedata.co.jp/news/release20190423）。
当社で保有する全国規模でのスーパーマーケットおよびドラッグストアの購買データ（統計化されたPOSデータ）と、購買時の気温、湿度などの気象観測データを解析して、［当日］、［週間］の需要予測を7ランクの指数で予測するWEBサービスです。気温と販売数の関係が比較的知られている定番のものから、気温との関係性があまりはっきり知られていないものまで数百の分類に対応して需要予測指数をご提供いたします。ご関心のある方は、ぜひ当社までお問い合わせください！
（流通気象コンサルタント 常盤 勝美）
