「流通・小売業のためのリテールマーケティングセミナー(第7回)」で当社越尾が講演しました

日本商工会議所様、日本販売士協会様は、「リテールマーケティング(販売士)検定試験」に関連して、日本経済新聞社販売局様とセミナー「流通・小売業のためのリテールマーケティングセミナー」を継続的に開催しています。

5月25日に開催された第7回では、当社True Dataの執行役員でリテールマーケティング部兼アナリティクス・ソリューション部長を務める越尾由紀が講演しました。今回は、当日のセッション内容をレポートします。

ビッグデータと言われると、現場ではどうしても縁遠いものと考えられてしまうかもしれません。それに対して越尾の講演では、「ビッグデータ活用を『自分事』に」と題し、ビッグデータを現場で実際にどう役立てるかについて、流通・小売業での豊富な実例をまじえて解説しました。

越尾がとり上げたのは、ポイントカードなどの会員情報と紐づいたPOSデータ(ID-POS)です。かつての流通・小売業ではポイントカードを値引き合戦に使う時代もありましたが、現在ではID-POSによるデータの活用が見直されています。旧来のPOSのデータでもいつ、何がいくつ売れたか分かりましたが、ID-POSのデータではさらにどのような人が買ったのかが分かります。

例えば、売り上げが下がったときに、POSデータだけだと客数(取引数)が減ったのか客単価(レシート当たり単価)が下がったのかしかわからないですが、ID-POSがあれば、客数を「稼働顧客数」と「頻度」に分解し、客単価を「商品単価」と「買上点数」に分解できるため、課題を絞りこむことができ、対策が打ちやすくなります。また、例えば惣菜の時間ごとの売上に、購入者の年齢構成を重ねることで、高齢者の多い時間にはあっさりしたもの中心、若い人が多い時間には安くてボリュームのあるもの中心といった施策がとれます。

こうしたデータ活用が流通・小売業で求められる背景として、現場が深刻な状況にあることが挙げられます。少子高齢化や地方人口減少により、客数は減少傾向にあります。また、ネット販売や他業態との競合争いも厳しくなっています。お客様のニーズも多様化して、品ぞろえも難しくなっています。

そこで、新しい顧客の獲得や店のオリジナリティ作りなど、顧客との接点を改善するためにビッグデータを活用する意義を越尾は語りました。

ここから、当社が関わった、流通・小売業でのデータ活用の事例です。

まず、小売業とパートナー(メーカー)がID-POSデータを共有することで、双方で施策を考える例です。メーカーは自社製品を売りたいし、流通業はそのカテゴリーが売れればいいという利害の違いがありますが、いっしょに考えることで共通の利益を目指せます。この事例では、健康コーナーを作って減塩醤油を売ったところ、ラベルに「減塩」と書かれた商品は60〜70代に、「塩分ひかえめ」と書かれた商品は40代に売れたことが分かりました。ここから、40代女性に向けて、「塩分ひかえめ」の醤油とその他の健康指向の商品を組み合わせて販売してみる、などの施策を考えることができます。

また、クラスタ分析により自社に来店されるお客様を分類(客層)し、買い物の特徴を見える化した事例もあります。会社員が帰る時間帯には「ビール」などのアルコール飲料と「つまみ」の組み合わせで買い物が発生する傾向があります。しかし、ある店舗では、曜日別時間帯別の客層が同じ店舗と比較して、思った売上がとれていませんでした。実は、もっと早い時間帯で「売り切ってしまっていた」ためチャンスロスが発生していたのです。曜日や時間帯と来店客層の特徴に合わせて対策を行ったところ、対象の客層の売上および全体の売上も向上しました。

そのほか、「お客様が買いやすい売り場を目指したい」という目標をTrue Dataの「サブ・カテゴリ分析」という統計モデルを活用することで、購買ニーズ構造を見つけだし、そのニーズを売り場に反映させるという取り組みも実現しました。定番売り場の中で単価アップや併買を誘引させる目的別機能陳列での売り場づくりです。KPIとして「客単価アップ」「購入率アップ」を設定し、結果、「全体売上高112%」「購入者数109%」「客単価103%」と目標を達成しました。

現在は、自社のID-POSだけでなく、True Dataが保有する全国パネルから導きだすカテゴリ顧客ニーズ構造と比較し、その違いから自社にない潜在ニーズや自社オリジナルニーズに特化した売り場作りの取り組みも始まっています。

店を継続的に利用するファンになっていただく「Life Time Value」の施策もあります。特に女性は結婚や出産、子育てなどのライフステージにより消費が変わります。

例えば、妊娠したら葉酸や妊娠検査薬を、出産したらベビー用品を、子育て期には文房具を買うようになります。また、子供が小さいときには化粧品の購入が減り、大きくなってくるとまた増えます。こうした購買結果の変化を追いかけることで継続的にお店を利用してもらうために推奨する商品を見つけたり、来店した時に必要な商品と出会えるような店頭販促の工夫ができるようになります。

これからのビッグデータの活用は、自社が保有するID-POSをいろいろな観点や視点で見直してみるだけでなく、他のビッグデータと「つなげたり」「かけあわせたり」することで新しい発見や価値にしていく必要があります。ぜひ皆さんも、ビッグデータを自分事として役立ててみてはいかがでしょうか?