メーカー企業のための気象&購買データ活用法       第8回 ウェザーMDを利用した商品開発

こんにちは。流通気象コンサルタント・気象予報士の常盤勝美です。前回は、今後の気候変動に伴う異常気象の頻発をリスクと捉えた場合の対応手順について解説しました。今回は気候変動をビジネスにおけるチャンスと捉えた場合の攻めの方向性の一つとして、ウェザーMDを利用した商品開発を考えます。以下に、その方法とポイントを簡潔に解説しますので、是非気候変動をうまく活用していただければと思います。

改めて自社商品の気象条件における得意・不得意を把握する

自社商品の、気象条件との関係性を改めて細かく調べてみましょう。季節商品を扱っているメーカー企業で、売上・利益を大きく確保できる季節とできない季節があるのは分かりやすいことですが、例えばパンや調味料など通年商品であっても気温の上下によって売上の波がある場合があります。例えばこちらのブログ記事「鍋物料理の種類別、気温との関係」にあるような、気温と売上の関係を自社のあらゆる商品において図で示し、自社の得意な温度帯、不得意な温度帯を把握します。そして、得意な温度帯での売上をさらに伸ばす施策を検討するのか、不得意な温度帯での売上の底上げ施策を検討するのか、商品開発にあたっての目標を立てます。

気候変動と自社の得意分野との親和性を考える

地球規模での気候変動によって、今後は年間を通して気温水準が上昇し、夏は長く、暑さが厳しくなり、本格的な春・秋を感じられる期間は短くなります。その傾向が、自社商品にとって追い風(ポジティブ)なのか、向かい風(ネガティブ)なのかを考える必要があります。暑いと売れる商品であれば、比較的追い風と言って良いでしょう。それに対して涼しいと売れる商品であれば、今後に向けて商品コンセプトなど抜本的なてこ入れの検討も必要となってきます。今後の商品開発において、気候変動に伴う消費の変化も従前以上にシビアに見極める必要があるということです。

得意を伸ばす原材料を考える

商品には、様々な気象条件において①売上が伸びるタイプのもの、②売上が落ちるタイプのもの、③売上への影響がほとんどないものがあります。その気象条件になったとき、からだがその商品を欲しくなることを示唆するものです。つまり、どのような気象条件に対応した商品を開発するか考えるにあたり、気象条件と売上の関係性に即したものを原材料とすると、支持される確度が高まります。ブランドエクステンションなどにもつなげていきたいところです。

例えば、野菜の中でトマトは気温が高い時に好まれる傾向があります。冬物の新商品の開発にあたり、これからの時代の暖冬頻度の増加傾向を想定すると、原材料にトマトを足したり、トマトフレーバーのラインアップを増やしたりするのも一案です。

健康に配慮した調整

地球沸騰化に代表される近年の気候変動による消費への影響で、最も重要なキーワードは“健康影響”です。顕著な高温や低温、集中豪雨、ドカ雪、急激な気温の変化など、からだの健康リスクを高めるような現象が増える中、どのようにからだの健康な状態を維持するかは、消費ニーズの根幹にあたる部分だと考えます。

特に気温に関する項目の多くは、からだにとって血圧の上昇や乱高下などにつながりやすいものです。熱中症対策には水分に加えミネラル分補給も期待されるところですが、実際的には過度な塩分、糖分の摂取を控えた商品にした方が支持を得られやすいと考えます。

次回は、バイヤーへの提案や販促活動にもつながる施策として、“商品前線”とその活用について解説いたします。

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「メーカー企業のための気象&購買データ活用法」バックナンバーはこちら                 第一回 https://www.truedata.co.jp/blog/weather_marketing/20240801                    第二回 https://www.truedata.co.jp/blog/weather_marketing/20240901                    第三回 https://www.truedata.co.jp/blog/weather_marketing/20241001                    第四回 https://www.truedata.co.jp/blog/weather_marketing/20241101                    第五回 https://www.truedata.co.jp/blog/weather_marketing/20241201                    第六回 https://www.truedata.co.jp/blog/weather_marketing/20250101                    第七回 https://www.truedata.co.jp/blog/weather_marketing/20250201

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株式会社True Data 流通気象コンサルタント 常盤 勝美
〈プロフィール〉
大学で地球科学を学び、民間の気象会社で約20年にわたりウェザーマーチャンダイジング関連サービスに従事。2018年6月、True Dataへ入社し、気象データマーケティングを推進。著書に『だからアイスは25℃を超えるとよく売れる』(商業界)など。気象予報士、健康気象アドバイザー。