こんにちは。流通気象コンサルタント・気象予報士の常盤勝美です。2025年最初の投稿となります。今年もよろしくお願いします。さて、今冬は12月上旬後半あたりから急に寒さが本格化し、冬らしい寒さの日が多くありましたね。年末年始の消費のポイントとして今回は、大掃除グッズの売上と寒さ(気温)の関係について、直近2年分のデータをもとに考察してみました。
2023年12月と2024年12月の気温比較
まずは気温がどうだったか確認します。
図表1は、12月の気温に関して、平年値との差の推移を表したグラフです。グラフを見て分かるとおり、2023年は時期によって気温上下の波が非常に大きく、寒暖差の激しい12月でした。ただ、月間トータルの気温で見ると、ほとんどの地点で平年より高めでした。一方2024年は、上旬前半こそ高めでしたが、その後は気温上下の波は比較的小さく、平年並か平年よりやや低い状態が月末にかけて続きました。極端な高温はなかったものの、猛烈な冷え込みもなかったのが2024年12月の気温傾向の特徴です。2023年と2024年の比較で見ると、特に上旬後半~中旬前半は大きな違いがありました。月間気温に関して、詳しくは図表2で確認ください。
大掃除関連商品の購買動向
大掃除に使うことが想定される商品カテゴリとして、「住居用洗剤」「ガラス用洗剤」「換気扇・レンジクリーナー」の3つの購買データを見てみました。
3カテゴリとも、11月頃から売上が徐々に大きく伸び始め、12月下旬にはそれ以外の時期と比べて10倍前後の高い売上水準となっています。
その中で2023年と2024年の購買動向の違いを細かく見ると、12月の各週別の指数はいずれも2023年の方が2024年よりも大きくなっています。年末の日付と曜日の関係など、様々な要因が影響しているとは思いますが、単純に気温との関係で見た場合、2023年より寒さの厳しい日が多かった2024年の方が、売上水準が低くなっています。寒さ(気温)の影響も受けた可能性があります。
そしてもっと興味深いことに、この3カテゴリの売上ピーク週の2023年に対する2024年の売上比を見ると、以下のような順番でした。
窓ガラスなどを拭くことが主用途のガラス用洗剤は、窓を開け、あるいは屋外やベランダで外気に触れての作業を行うことが多いため、掃除時に最も外の陽気を感じやすく、両年の気温差の影響を強く受けたのかもしれません。換気扇・レンジクリーナーも水回りの掃除のため、冷水を使って作業する機会が多いことでしょう。住居用洗剤も当然、冷水を使う場面もありますが、屋内作業のことが多く、水に触れる機会がこの3つの中では最も少ないため、気温差の影響が最も小さくなったのかもしれません。仮説の範囲ですが、興味深く感じました。
まとめ
今回は2023年と2024年のデータを比較した1つの事例紹介の範囲ですが、寒さが厳しい時は大掃除が億劫になるという人々の行動心理を想起させる興味深い結果となりました。これを、大掃除に関連する様々なカテゴリやより長い期間で分析し、仮に同じような結果が得られたのなら、統計的に考えても確からしい消費者行動心理と見なせそうです。長期予報と連動した12月のMD計画を立てる際など、是非参考にしてみていただければ幸いです。
※抽出データ 株式会社True Data「ドルフィンアイ」に搭載されている各カテゴリ(業態:ドラッグストア、期間:2023年1月16日~2025年1月12日、データ抽出日:2025年1月22日)の週次の買物指数(買物指数は来店者100万人における購入点数)。
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株式会社True Data 流通気象コンサルタント 常盤 勝美
〈プロフィール〉
大学で地球科学を学び、民間の気象会社で約20年にわたりウェザーマーチャンダイジング関連サービスに従事。2018年6月、True Dataへ入社し、気象データマーケティングを推進。著書に『だからアイスは25℃を超えるとよく売れる』(商業界)など。気象予報士、健康気象アドバイザー。