こんにちは。流通気象コンサルタント・気象予報士の常盤勝美です。最近、夏が長くなった、秋が短くなったと実感している人は多いのではないでしょうか。今回は、実際のところ夏が長くなっているのか、簡単に検証してみました。
真夏日初日と真夏日終日
本格的な夏を実感する期間に対する仮説として、東京で最高気温30℃以上の真夏日を観測した期間の長さ(真夏日初日と真夏日終日の差)を、1946年以降で調べてみました。真夏日初日は年によってばらつきが大きく、最も早い年で5月5日(1960年)、最も遅い年で7月26日(1955年)でした。
真夏日終日は、最も早い年で8月26日(1966年)、最も遅い年が今年2024年で10月19日でした。
この期間のトレンドで計算すると、真夏日初日は10年で約1.5日早くなっており、真夏日終日は10年で約1.4日遅くなっていました。つまり、戦後70年で実に3週間、夏が長くなった計算となります。実感として夏が長くなっていることを裏付ける一つの証左です。
“夏が長くなっている”ことの消費への影響
“長くなった夏”の消費への影響を見る一つの事例として、「ファミリーアイス」の売上推移を調べました。過去に筆者が調べた結果、「ファミリーアイス」の売上と気温の間には相関係数約0.94という極めて強い関係性があります。今回は5年前の2019年と今年(2024年)の売上推移データを比較してみました。
2019年は「ファミリーアイス」の売上が大きく伸びるタイミングが2024年と比べて遅くなっていますが、これは、2019年7月前半の気温が低めだったことの影響によるものと考えられます。ポイントは、夏の暑さのピークを過ぎた後の売上の縮小状況です。確かに9月上旬は2024年が2019年に比べてかなり高めでしたが、それ以外はそれほど大きく差があるようには見えません。にもかかわらず、「ファミリーアイス」の売上は8月後半から9月いっぱいくらいにかけて、2024年の方が2019年をはっきりと上回る状況がグラフから読み取れます。
今回は直近の調査による2024年の購買データと、以前調査した2019年の購買データを参考として比較しています。その間経済情勢をはじめとして様々な環境が変化しているでしょうから、当然それらの要因が含まれた結果であることをご承知おきください。また単年のデータ同士での比較のため、統計的な議論はできません。あくまで仮説の範疇ですが、“長くなった夏”に対応して「ファミリーアイス」の売上が高い期間が以前と比べて伸びている可能性があります。
まとめ
“長くなった夏”の消費への影響は、まだ分析検証作業が始まったばかりの段階です。今後も2023年、2024年夏のような猛烈な暑さ、長引く残暑が続けば、消費への影響は様々な分野に見られるかもしれません。私が継続的にその状況を追い続け、消費への影響が考えられるポイントが確認されましたら、随時発信していきます。
※抽出データ 株式会社True Data「ドルフィンアイ」に搭載されている、「ファミリーアイス」カテゴリ(業態:スーパーマーケット、期間①:2018年12月31日~2019年12月29日、データ抽出日:2020年12月17日、期間②:2024年1月1日~2024年12月8日、データ抽出日:2024年12月16日)の週次の買物指数(買物指数は来店者100万人における購入点数)。
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株式会社True Data 流通気象コンサルタント 常盤 勝美
〈プロフィール〉
大学で地球科学を学び、民間の気象会社で約20年にわたりウェザーマーチャンダイジング関連サービスに従事。2018年6月、True Dataへ入社し、気象データマーケティングを推進。著書に『だからアイスは25℃を超えるとよく売れる』(商業界)など。気象予報士、健康気象アドバイザー。