こんにちは。流通気象コンサルタント・気象予報士の常盤勝美です。10月は、全国の90%以上の気象観測点において月平均気温が歴代1位の高温となりました。この記録的な高温により秋冬物を中心に、消費にどのような影響があったか、ほぼ平年並の気温だった昨年との比較という観点で調べてみました。
2024年10月の気温実績
10月20日~21日の週末に北日本上空に強い寒気が南下し、北海道の各地で初雪を観測するなど冷え込みが強まった関係で、東北北部~北海道では平年との差がやや小さめでしたが、それ以外の地方は気温が平年より大幅に高くなりました。図1から、かなり気温の高い10月だったことがうかがえると思います。
2023年10月の天候実績
今回、比較対象とする2023年10月の天候を振り返ります。
2023年の10月は、月平均気温の平年差分布(図2)を見ると、北海道では気温が平年より高めでした。一方九州の一部では低めのところもありましたが、それ以外は平年と比べて大きな差はなく、ほぼ平年並だったとみなせます。
つまり、2023年と2024年で10月の気温を比較すると、北海道方面ではそれほど大きな違いはありませんが、それ以外は2024年、前年より大幅に気温が高かったことになります。
高温の影響を調査したカテゴリ
今回調査したのは、気温との関係性が認められるカテゴリとして、今年7月に発表した調査リリース(地球沸騰化時代が到来!暑くなると売れる飲み物&食べ物は!?)の中から選定しました。この調査リリースの中で分析した菓子、飲料、惣菜それぞれの部門の中で、気温と売上の相関係数が高かったもの、低かったものそれぞれ上位3カテゴリずつ、合計18カテゴリが対象です。
結果
今回調査対象とした全18カテゴリの、2024年10月の月間購入個数の昨対比の一覧を下表にまとめました。
気温と売上に負の相関があり、気温が低い方が売れやすいカテゴリでは、昨対比100%以上となったものはありませんでした。さすがに10月の高温が売上の追い風になることはなかったと考えられます。ただしその中でも煮物(惣菜)は昨対比99.7%と、ほぼ100%に近く、高温の影響が比較的小さかったのかもしれません。
一方、気温と売上に正の相関があり、気温が高い方が売れやすいカテゴリでは昨対比100%以上となったカテゴリが9つ中3つ(ファミリーアイス、パーソナルアイスその他、鰻蒲焼)あったものの、残りの6カテゴリは100%未満で、前年を下回る結果となりました。特に相関係数が0.95と、今回調査対象の18カテゴリの中で最も高い値を示したコーヒードリンクでさえ、昨対比は99.6%と、わずかではありますが昨年を下回りました。
考察とまとめ
春夏なのに涼しい、あるいは秋冬なのに暖かいといった、季節に逆行した気候の場合は、季節商品の売上が伸び悩むだけでなく、気温と売上の相関関係が逆となるカテゴリに関しても、必ずしも売上が伸びるわけではないようです。
やはり、春夏は気温が高い方が、秋冬は気温が低い方が、経済的にはプラスに作用するということなのでしょう。
※抽出データ 株式会社True Data「イーグルアイ」に搭載されている、各カテゴリ(業態:スーパーマーケット、期間:2023年10月及び2024年10月、データ抽出日:2024年11月14日)の月次の購入個数。
本ブログに対するご意見、ご感想、気象と消費データに関するお問い合わせ等は、お気軽にこちら(https://www.truedata.co.jp/contact)までお寄せください。
株式会社True Data 流通気象コンサルタント 常盤 勝美
〈プロフィール〉
大学で地球科学を学び、民間の気象会社で約20年にわたりウェザーマーチャンダイジング関連サービスに従事。2018年6月、True Dataへ入社し、気象データマーケティングを推進。著書に『だからアイスは25℃を超えるとよく売れる』(商業界)など。気象予報士、健康気象アドバイザー。