寒さ対策商品の売上推移から見る季節の急激な進み

こんにちは。流通気象コンサルタント・気象予報士の常盤勝美です。近年、秋の季節を感じられる期間が短くなったという話題をよく耳にします。今年も、途切れることのない夏の暑さ、9月の長引く残暑と、夏の季節を感じられる期間が長くなった一方で、11月に入ると真冬並の寒さとなる日が見られるなど、秋らしい爽やかな陽気を感じられることが少なく、秋が短かったという印象の方が多いと思います。今回は秋冬物季節商品の中から、気温との関係性が強い「使い捨てカイロ」と「しもやけ・あかぎれ用薬」の2カテゴリをピックアップし、売上推移から季節の急激な進みを確認してみたいと思います。

2023年11月前半の気温推移

売上推移を見る前にまず、2023年11月前半の気温推移を振り返ります。11月前半は日本の北を低気圧が進むことが多く、日本列島は南寄りの風が吹きやすかったため、気温は全般に平年よりかなり高めでした。7日の東京都心の最高気温は27.5℃と11月歴代1位の高温となりました。4日と6日にも最高気温が25℃以上の夏日を記録しています。

それが、10日に日本列島を通過した寒冷前線を機に状況が一変します。背後から強い寒気が南下し、気温が大きく下がりました。東京都心でも11日夜から気温が大きく下がり始め、12日朝にはこの秋以降初めて10℃を下回りました。そしてその12日、北東の冷たい風が吹いたため、東京都心の最高気温は11.7℃と12月中旬の寒さとなりました。11月歴代最高気温を更新してわずか5日後のことです。季節外れの低温はその日のみでしたが、その後も数日間は気温がおおむね平年並に推移し、一気に秋の深まりを感じることとなりました。

「使い捨てカイロ」と「しもやけ・あかぎれ用薬」の売上推移

2021、2022年の2年間分の購買データでは、この2カテゴリはともに最低気温との相関係数が-0.8程度で、気温が低ければ低いほど売上が伸びる関係性が強いことを示唆しています。今年9~11月の速報値で、これら2カテゴリの売上推移をグラフにしてみました。

図1 「使い捨てカイロ」の買物指数と最低気温の推移
図2 「しもやけ・あかぎれ用薬」の買物指数と最低気温の推移

両カテゴリともに、気温が大きく下がった11月13日週に、前週と比べて売上を大きく伸ばしました(図中、赤丸で囲った部分)。前週比で、「しもやけ・あかぎれ用薬」では約1.8倍、「使い捨てカイロ」に至っては約2.7倍の伸びでした。季節の急激な進みを感じて、多くの人が寒さ対策商品を購入したことがデータからもよく分かりました。

昨年との比較

参考までに昨年のデータと比較してみます。昨年、10月は気温が平年並かやや低めだったところもあり、比較的順調な季節進行でした。日々の気温上下の波は大きかったものの11月上旬まではおおむね平年並でした。それに対応して両カテゴリとも10月下旬頃に売上の大きな伸びが見られます。今年はその伸びが昨年より3週間ほど遅れたということが分かります。

気づき

ところでこの2カテゴリのグラフを見て、ちょっとした気づきがありました。前週に比べて大きく売上を伸ばした頃の気温を追ってみると、最低気温がその秋初めて10℃前後まで下がったタイミングとほぼ一致します。つまり、「使い捨てカイロ」と「しもやけ・あかぎれ用薬」は最低気温が10℃くらいまで下がると売上の伸びが大きくなるという仮説が立てられそうです。

図3 「使い捨てカイロ」の売上が大きく伸びた時期と最低気温の対応
図4 「しもやけ・あかぎれ用薬」の売上が大きく伸びた時期と最低気温の対応

※抽出データ                                   株式会社True 株式会社True Data「ドルフィンアイ」に搭載されている、「使い捨てカイロ」「しもやけ・あかぎれ用薬」カテゴリ(業態:ドラッグストア、期間:2022年9月5日~2023年12月3日、データ抽出日2023年12月14日)の週次の買物指数(買物指数は来店者100万人における購入金額)。

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株式会社True Data 流通気象コンサルタント 常盤 勝美
〈プロフィール〉
大学で地球科学を学び、民間の気象会社で約20年にわたりウェザーマーチャンダイジング関連サービスに従事。2018年6月、True Dataへ入社し、気象データマーケティングを推進。著書に『だからアイスは25℃を超えるとよく売れる』(商業界)など。気象予報士、健康気象アドバイザー。