例年より早い猛暑と清涼飲料の購買動向

こんにちは。True Data流通気象コンサルタント・気象予報士の常盤勝美です。みなさんの今夏の天候の印象はいかがでしたか。地域によって違うかと思いますが、関東以西は「暑かった」、北陸以北は「雨が多かった」という感じではなかったかと推察します。そして特に強く印象が残ったのはやはり、6月下旬~7月上旬の高温と、そのタイミングでの梅雨明け発表ではないでしょうか。今回はそんな今夏の天候と、清涼飲料の販売動向を振り返ります。

今夏の天候振り返り

気象庁では毎年9月最初の平日に、その夏の天候を総括する資料を発表しています。それによると、今夏の気温は北日本で「高い」、東日本、西日本、沖縄・奄美では「かなり高い」という結果でした。つまり今夏は全国的に“猛暑”だったということです。そして、梅雨に関しては、気象庁の担当者もその判断に苦悩するほど、不規則なものでした。当初6月27日から29日にかけて、九州~東北南部の各地方で統計史上最も早い梅雨明けが発表されたものの、事後解析により梅雨明けが見直され、確定値は7月下旬(※表1参照)となり、北陸及び東北地方では梅雨明けの日付を「特定せず」ということになりました。梅雨明け直後の夏空と思われた6月下旬から7月上旬の晴天の継続は、結果的には長めの梅雨の中休みと解釈されたことになります。

表1 各地の今年(2022年)の梅雨明けの状況【出典:気象庁報道資料】

また、2022年8月22日に気象庁内で行われた「異常気象分析検討会」では、6月下旬から7月初めの記録的な高温及びその後の天候の特徴と要因についての議論が行われ、座長である東京大学先端科学技術研究センターの中村尚教授は記者会見で、「異常な状態、極端な状態と言って差し支えない」と述べました。

実際6月下旬から7月上旬、東京都心では9日連続の猛暑日(最高気温35℃以上)を記録したほか、東日本の内陸部では最高気温40℃以上を記録する日が3回出現するなど、猛烈な暑さとなりました。

猛暑で伸びたランキング

例年よりかなり早めに訪れた猛烈な暑さに、夏を代表する清涼飲料の各カテゴリがどのような反応を示したか、調べたのがこちらです。東京都心で1週間ずっと猛暑日が続いた6月27日~7月3日の週の買物指数が、その直前週と比較してどれだけ伸びたか、表2に伸び率上位10カテゴリをランキングで示します。

表2 清涼飲料の分類の中での買物指数伸び率ランキング
(2022年6月20日~の週を100としたときの、同年6月27日~の週の買物指数の割合)

この1週間で最も買物指数の伸び率が大きかったのは、「スポーツドリンク」でした。災害級とも言うべき暑さに対して、体を守るという観点で購入された方も多かったのではないかと考えます。前週比1.7倍は、かなり大きな数値です。それ以外もトップ10までは前週を10%以上上回る伸び率となりました。参考までにスポーツドリンクの時系列グラフを掲載します。

売上の急増があったタイミングを細かく見ると…

晴れて気温が高く、”梅雨の中休みだった”期間を6月下旬から7月上旬と示しましたが、具体的には6月24日(金)から、晴れて気温が平年を上回る地点が多くなりました。そして、翌25日(土)以降東京都心で猛暑が継続、また群馬県内で最高気温40℃超を観測する猛烈な暑さとなりました。

なお、今回分析したカテゴリの中で一部、6月27日週よりも早い6月20日週に売上の急増が始まったカテゴリがありました。それがコーヒードリンク、紅茶ドリンクです。コーヒードリンク、紅茶ドリンクとは、具体的に缶やペットボトルに入った状態で販売されているコーヒー飲料、紅茶飲料です。気温傾向の急変(大幅上昇)に反応して販売数が増加したことに加え、事前の天気予報でその先猛烈な暑さがやって来ることが継続的にアナウンスされていたため、スポーツドリンクなどと比べて少し早い段階から、準備用に大量購入された可能性が考えられます。ちなみにこれら2カテゴリは、20日週に対する27日週の伸び率は100%を下回っていました。

早い猛暑に、明確な反応が見られなかったカテゴリ

例年より早く訪れた厳しい夏の暑さに対して、明確な反応が見られなかったカテゴリがありました。それは、乳酸菌飲料、ドリンク剤、トマトジュースです。気温変化以外の要因による買物指数変動のほうが大きかった可能性があり、急に暑さが厳しくなったからといって、売上が大きく伸びるという感じではなかったようです。

同じ清涼飲料の分類の中でも、カテゴリによっては気温変化に非常に敏感に反応するものや反応が弱いもの、また種類によっては気温変化に対して反応する時期が早いものもあり、様々な違いがあらわれる、興味深い結果となりました。梅雨の中休みの際など、急に真夏の暑さとなった場合に、清涼飲料の中で優先的に展開すべきカテゴリの見極めや、展開強化規模の参考にしていただきたいと思います。

※抽出データ                                   株式会社True 株式会社True Data「ドルフィンアイ」に搭載されている、「清涼飲料」(業態:スーパーマーケット)の、週次(期間:2022年5月2日~2022年7月31日、データ抽出日:2022年9月13日)の買物指数(買物指数は来店者100万人における購入金額)。

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株式会社True Data 流通気象コンサルタント 常盤 勝美
〈プロフィール〉
大学で地球科学を学び、民間の気象会社で約20年にわたりウェザーマーチャンダイジング関連サービスに従事。2018年6月、True Dataへ入社し、気象データマーケティングを推進。著書に『だからアイスは25℃を超えるとよく売れる』(商業界)など。気象予報士、健康気象アドバイザー。