猛暑予想の夏、忘れず訴求したい商品は?

こんにちは。流通気象コンサルタント・気象予報士の常盤勝美です。気象庁の発表によると、今冬の天候は北日本と南西諸島で平年並、東日本と西日本では低温傾向(寒冬)だったとのことです。確かにここ最近数年は冬の1月、2月であっても時期によってはかなり暖かい陽気になることがあったのですが、今冬はそれがほとんどなく、寒い陽気が続いた感じがします。それが3月の声が聞かれるころから一気に気温が上がりましたね。

冬が終わったこの時期、気になるのは今夏の天候ではないでしょうか。気象庁が2月25日に発表した暖候期予報によると、今夏の気温は南西諸島で平年並か高め、それ以外の地方は高めと予想されています。すなわち、全国的に猛暑となる可能性が高いという内容です。流通はじめ各産業は、今夏の猛暑予想に対応した準備を始めていることと思いますが、具体的にどのカテゴリの商品の売り込みに注力すれば良いのでしょうか。

今回は商品の売上と気温の簡単な相関分析を行った結果を発表します。定番から意外と忘れがちなものまで、気温が高い時に売上が伸びる関係性が示されたものを一通り列記しますので参考になさってください。

分析の方法と意味

分析は、気温と売上の2つのデータを並べ、相関係数を求めるという比較的シンプルな方法です。ただし、曜日による客数の違いや特売など、日々の細かな売上変動要因の影響を除外するため、それぞれ月曜日~日曜日までの7日間平均を計算し、週別データとして扱っています。

注意点は対象となるデータの期間です。定義上、夏というと6~8月の3か月ですが、8月は季節の進みとともに気温が下がっていく時期に入るため、夏物季節商品の売上は減少方向となり、気温との関係性が弱くなります。そのため、今回対象となるデータ期間は6~7月の2か月間(※2020年と2021年の2年分)としました。

また、直近は新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けて、従前とは異なる購買動向を示しているカテゴリもあります。そういったイレギュラーな購買動向を示したカテゴリは、気温と売上との関係が正しく表現できない可能性があるため除外しています。また、旬や収穫時期あるいは相場価格の関係で、季節による売上変動の幅が大きい生鮮品に関しても、今回は分析対象から除外します。 結果は相関係数ランキングという形で示します。相関係数は1~-1の値を取ります。値が1あるいは-1に近いほど両者(気温と売上)の関係が強く、0に近いほど関係が弱いことを示します。なお、明確な判断基準はありませんが、便宜的に相関係数の値によって相関の強さを下表に示すランクに分けています。

そして、強い相関がある(相関係数±0.7~±1.0)カテゴリが「夏物定番商品」、相関がある(同±0.4~±0.7)カテゴリが「夏物重点商品」、弱い相関がある(同±0.2~±0.4)カテゴリを「忘れずに訴求したい商品」と位置付けました。

相関係数ランキング

ランキングは以下の表のとおりです。

留意いただきたい点

分析結果に誤解がないように留意いただきたい点があります。相関係数が小さい(=気温と売上の関係が弱い)カテゴリの中には、季節や気温に関係なく1年じゅう一定の高い販売数水準があるため、見かけ上、気温との関係が弱くなるものがあります。気温が上がってもそれほど売上が伸びないというわけではなく、気温に関係なく日々高い売上があるため、気温上昇によってさらに売上の伸びる率は、相対的に小さくなってしまうということです。

いつから売り込み強化をスタートすべきか

夏に向けてこれらのカテゴリ商品の売り込み強化を、いつ頃から始めるべきでしょうか。時期の見極めには分析結果だけでなく、天候のより細かな予測情報が必要となります。売上が気温と関係する商品には、気温の上昇あるいは下降とともに単調に売上が伸びるタイプのものもあれば、ある一定水準の気温までは関係性が弱いものの、基準となる気温を超えたときに気温の上昇あるいは下降とともに売上が大きく伸びるタイプのものもあります。後者の場合、今年はその基準となる温度にいつごろ到達する見込みか、天気予報の中から読み取る必要があります。なお「売りドキ!予報」サービスでは、「12週の予測」メニューの中で、売上が伸び始める時期的な目安に関する予測情報が提供されていますので、是非ご活用ください。

まとめ

猛暑を想定した際に売り込みを強化したいカテゴリ群、再認識いただけましたでしょうか。過去からのナレッジの蓄積で、感覚的に把握できているカテゴリばかりだったかもしれませんが、実際のデータに基づいた結果で確認することで、より説得力のある計画になるものと期待しています。

※抽出データ                                   株式会社True Data「イーグルアイ」に搭載されている食品部門各カテゴリ(業態:スーパーマーケット、期間:2020年1月6日~2022年1月2日)の週次の購買指数(購買指数は週別購入金額の当該期間平均値を1としたときの比率)と、気象観測点「東京」における同期間の最高気温週平均値。

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株式会社True Data 流通気象コンサルタント 常盤 勝美
〈プロフィール〉
大学で地球科学を学び、民間の気象会社で約20年にわたりウェザーマーチャンダイジング関連サービスに従事。2018年6月、True Dataへ入社し、気象データマーケティングを推進。著書に『だからアイスは25℃を超えるとよく売れる』(商業界)など。気象予報士、健康気象アドバイザー、地球温暖化防止コミュニケーター。