こんにちは。流通気象コンサルタント・気象予報士の常盤勝美です。気象庁の発表によると、今冬の天候は北日本を除いて暖冬でした。12月半ばから1月半ばにかけて、全国的に厳しい寒さの日が多かったものの、1月後半以降、東日本、西日本で南からの暖かい空気が入りやすい状態が続いたことが要因で、東日本、西日本の暖冬は3年連続です。しかしながら消費において昨冬とは少し様子が異なったところがありました。今回は、昨冬とは少し様子が異なった購買動向と、その要因についてまとめたいと思います。
しもやけ・あかぎれ用薬の購買動向
今冬の購買動向が、全てのカテゴリにおいて異なっていたわけではありません。ここでは昨冬との違いがより明確だった「しもやけ・あかぎれ用薬」カテゴリのデータを見ていきます。
まず図1は、昨冬と今冬の週別購買数の推移です。昨冬はシーズン中、買物指数が特に大きく高まることなく春を迎えました。それに対して今冬は12月中旬から1月中旬にかけての期間、明らかに昨シーズンと比べて買物指数が高い状態が続きました。なお、12月上旬と2月の買物指数は昨冬とほぼ同様でした。
しもやけ・あかぎれは、厳しい寒さによる体温低下を防ぐため毛細血管への血流量を減らすことが要因の一つといわれています。本来、しもやけ・あがきれ用薬の買物指数は冬場に高くなるはずです。しかし昨冬は買物指数の高まりがほとんど見られませんでした。今冬はアルコール消毒が日常化したことで手荒れの症状を訴える人の割合が増えた可能性がありますが、それ以上に昨冬と比べて買物指数が高くなりました。昨冬と今冬の天候の違い、どの部分に反応して買物指数が大きく異なる結果となったのでしょうか。
しもやけ・あかぎれ用薬の購買に影響した要因は?
昨冬(2019年12月~2020年2月)と今冬(2020年12月~2021年2月)の違いを分かりやすくするために、買物指数及び気温の両シーズンの差分をグラフにしてみました。それが図2です。
買物指数の前年差と最高気温の前年差は、それほど強い関係性があるようには見えません。それに対して最低気温の前年差は買物指数の前年差と逆の動きになりやすい関係があるように見えます。そこでそれぞれの関係性の強さを調べるために相関係数を求めてみました。
買物指数前年差と最高気温前年差の相関係数が-0.21で、相関が弱いとみなすことができます。それに対して最低気温前年差の相関係数は-0.74と強い相関がありました。すなわち昨冬に比べて今冬の買物指数が高かった主たる要因は、朝の冷え込みが昨冬に比べて強かった時期があることだと言えそうです。
カテゴリによっては、同じ暖冬シーズンだったとしても強い冷え込みの時期がある場合とほとんどない場合で購買動向が明確に異なる場合があることがよくわかりました。
分析の仕方はさまざま
商品の購入数(買物指数)との関係分析を行う上で気温データを用いると一口で言っても、最高気温、最低気温、平均気温、それぞれの前日差、それぞれの平年差、日較差(最高気温と最低気温の差)、一定の基準温度を突破した日数など、さまざまな切り口があります。そして、どの切り口が購入数に最も反応したか分析することで、次回以降、天気予報の中でどの部分を特に注目すべきか見極めることができます。
もし分析があまり得意でないということであれば、分析のプロが多数在籍する弊社にぜひ一度ご相談ください!
株式会社True Data 流通気象コンサルタント 常盤 勝美
〈プロフィール〉
大学で地球科学を学び、民間の気象会社で約20年にわたりウェザーマーチャンダイジング関連サービスに従事。2018年6月、True Dataへ入社し、気象データマーケティングを推進。著書に『だからアイスは25℃を超えるとよく売れる』(商業界)など。気象予報士、健康気象アドバイザー、地球温暖化防止コミュニケーター。